ギフテッドな息子と私の気持ち「息子のADHD発覚経緯④」by 鈴木セリーナ
2週間後、テストを持って大学病院を再訪。
採点が終わり、息子と2人で診察室に呼ばれ、医師から次のテストについての説明がありました。
臨床心理士との面談によるテストを受けるという内容。
テストのスケジュールを合わせ説明を聞き終わると、息子は外に出され、私だけ残されました。
先生「先日“文字の幼さ”についてお話した際も伝えましたが、この段階まで来るとおそらく、何もないということはないでしょう」
私「そうでしょうね。この年齢になると改善も見込めないですよね?」
先生「おそらく。10歳未満のお子様ですと、専門の治療施設で症状の改善に向けてトレーニングします。トムくんの年齢の治療施設が無いというわけでもないのですが、そこに通うことによる改善の見込みは低いでしょう」
私「彼の“変わった行動”
は個性として見ていますので、治療とかそういうことは求めていません」
先生「だとすると今回はどういう目的で来院されたのでしょう?」
私「診断書をいただきたいんです。明確な診断が無いまま、“変わった人”として生きていくには、社会の受け入れ体制は整っていません。
でも、あーこの子発達障害あるからなとか、ギフテッドだからな、と思えば、周りの人も彼を許せる部分が出てくると思うんです。
そのために受診しました」
先生「⁉︎そ…そうですか。では、現時点で“発達障害の疑わしき兆候あり“というお手紙を出しますか?」
驚きながらもナイスな提案をする医師に
「ぜひ。
こういう時、世の母親というのは、もっと違う反応をするものなのでしょうか。」
と聞いてみると。
「そうですねぇ。まずは“他の子と違う自分の子供“を受け入れるのに、少し時間がかかるケースが大半ですから、お母様も一緒にカウンセリングを受けることもあります」
と答える医師。
あまり興味本位でこれ以上あれこれ聞くのも申し訳ないので、外で寝て待つ息子を起こし、病院を後にしました。
臨床心理士と息子の面談も終わり、初めて来院した日から合計半年近くかかって、正式な診断書をゲットした私たち親子。
詳細はあえて書き記しませんが、いわゆる発達障害というもので、さらに細かく診断は別れます。
学校に提出すると、校長先生から電話があり「あーやっぱりそうだったんですね」
と言うので、
「そうそう。
理解できない言動があるかも知れんけど多めに見てやって」
的なお願いもして無事、今回の来院目的を果たしました。
イギリスでは息子のような子を“gifted”と言います。
日本の“発達障害”という言葉よりは聞こえがよく息子本人も、そういう自分を気に入っているようです。
いろいろなことがあって息子留学の経緯リンク、小学生からイギリス留学させましたが、16歳になった今でも、エロサイトではなく「クレヨンしんちゃん」「ドラえもん」を無限リピートで観ている息子は
きっと、日本にいたらイジメの対象だったでしょう。
話しはそれますが、私の母は低身長の身体障害者です。
“普通の子”として育てたいという祖父母の意向から母は普通の学校に通い、小学校3年生くらいで身長が止まってしまった母はその後、壮絶なイジメを受けて学生時代を過ごしたと聞きます。
母が正式な医師の診断を受け障害者手帳を手にしたのは、彼女が50歳を過ぎてからでした。
祖父の死が迫り、祖母が“自分が産み落とした障害のある子供を、自分は残して死んでいくんだ”ということをリアルに考えたことがきっかけで、医師の元へ診断書をもらいに行くことになりました。
母の来院の直前、祖母から私に電話があり
「ずっと、娘やと思っちょったけんな。おばあちゃんがあの娘を守ってやらんとと思いよったんよ。やけん、あの娘には“普通の人”として生きることを望んじょったし、そのように育てた。やけど、あの娘を守るおばあちゃんも、いつかは死ぬけんな。あの手帳があった方が、あの娘も生きやすいと思うんよ」
そんなことを言っていました。
“子供を守る”と、一言で言っても、その考え方や方法は様々。
前述の通り、私は息子をこの世に産み落としたその瞬間から、
“自分とは別の人生を歩む、別の人間”と認識していたので、発達障害の診断について、何が原因とか、誰のせいとか、そういう考えは皆無ですし、“変わってるよね”と言われる息子も気に入っています。
それになにより、変わった息子のことを気にする暇が無いほどに、自分自信が生まれも育ちも人と違うように思います。
息子がこれからどういう人生を歩むのかは未知ですが、少なくとも障害者として排除されるのではなく、“変わった人だけど特別な能力があるから利用しよう”という人が彼の周りに集まり、自分の持つ才能で生きてくれたら程度で考えたことから、遅くても、現段階で治療法はなくても、今回の診断が必要だった。
そう思っています。
完
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