第9回「甘えん坊で依存的なのは、愛情や献身的であることの才能の芽」 〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜 文:小鳥遊 樹(たかなし いつき) イラスト:air,(エア)
※こんにちは、小鳥遊 樹(タカナシ イツキ)です。
子どもの造形絵画教室を主宰して24年目になります。
これはお母さん達の子育ての悩みを、
会話形式で説明・解決していく子育てコラムです。
文中のエピソードや登場人物は、
筆者の経験を元に、個人情報がわからないように変えてあります。
あらかじめご了承ください。
【お母さまの悩み】
?:「どうしてうちの子って甘えん坊で努力ができないのかしら?
いつでも人をあてにして、
自分で出来ることでもやってもらおうとするのよ。
ベタベタまとわりついて離れないから鬱陶しいの。
ちょっと強く言うと、
グズグズ言って座り込んじゃうし。
メソメソして黙り込むし。
毎日、毎日叱りきれないんですけど…」
T:「待って待って、叱らないで!
その短所、お子さんの才能ですよ。」
?:「あらイツキちゃん。
うちの子の甘えん坊は才能じゃないわよ。
単純に依存的で楽をしたいだけなの。
人にやって貰えば、ご機嫌なのよ。困った子だわ。」
T:「いえいえ、そんなことはありません。
大切に育てると愛情や献身の才能になります。」
?:「愛されるのは得意かも。
せがんだことをやってもらえると、
パパ大好き❤️ありがとう!なんて、
にっこりお礼を言ったりして調子が良いのよ。
でも、献身なんて真逆よ。
大人が娘に尽くしている感じ。
おじいちゃんやおばあちゃんも甘くって言いなりなのよ。
私が小さい頃にはとても厳しかったのに。」
T:「確かに、この才能を持つ子たちは、甘え上手ですよね。」
?:「ちょっと重い物とか、すぐに持ってもらいたがるの。
だから、自分で持ちなさいって叱るのよ。
みんなが歩くような距離を、車で送ってとか言うし。
いろいろ思い出したら腹が立ってきた。」
T:「どうしてそんなに甘えて見せるのだと思いますか?」
?:「わざと甘えて見せているの?」
T:「わざとではなく無意識なのです。
でもそうすることには意味があります。」
?:「全然わからないわ。どんな意味があるの?」
T:「大きくなってから他の人に甘えられた時に、
どうやって甘えさせてあげれば良いのかという実験をしているのです。」
?:「実験?」
T:「はい。
いろんな甘えを繰り返すことで、こうしたらこうするのか、
こうされたらこうすれば良いのかという経験値を、
大人の反応を通して積み重ねているんですね。」
?:「え、そうなの?
じゃあ、甘えているのを叱るとどうなるの?」
T:「自分は甘えん坊でダメな子だと思い込むので、
甘える資質だけが残った自信のない子になります。」
?:「反対にたっぷり甘えさせてあげると…」
T:「育ててくれている大人と同じ行為を、
弱いものや守るべきものに対してするようになります。
どうやって抱きしめてあげれば良いのか、
どうやって励ましてあげれば良いのか学んでいるんですね。」
?:「そんな意味があったの…。」
T:「お母様は、自分は厳しく育てられたって仰っていましたから、
どうやって接したら良いか分からないのも当然なんです。」
?:「確かに主人は、子どもは大切にと優しく育てられたらしいのです。」
T:「私も同じ思いをしています。
私がこの短所を才能の芽だと気がついたキッカケを聞いて頂けますか?」
?:「是非、聞かせてください。」
【才能の芽だと気付いたきっかけ】
T:「アトリエにも甘えん坊のお子さんがいました。
お母さんと離れたくないんですね。
いつでも寄りかかってくっ付いていて、
置いて帰るというと不安そうにぐずります。
成長的に自分で出来るであろうことも、
お母さんがいれば甘えてお母さん任せ。
自分でやってみようか?と振っても、手が動きません。」
?:「まさに、うちの子よ。」
T:「アトリエは、付き添いを自由制にしているんですね。
一緒にいたいと望む子は、一緒にいれば良いし、
帰ってもらった方が良いと言う子は、お迎えに来てもらっていました。
私はとても不思議に思いました。
どうして、お母さんに早く帰ってと言う子と、
居てくれないと嫌だ。と言う子に別れるんだろうと。」
?:「ふんふん、それで?」
T:「面白いのですが、
わがままを聞いてもらえる子、
つまり愛情をふんだんにもらえる子は、
大きくなってから、とてもしっかりもので愛情豊かな子になるんですよ。
そのままずっと甘えん坊なんじゃなくて、
人を甘えさせるのが上手になるんです。」
?:「自分がしてもらったように、人にも出来るのね。」
T:「一方で、きちんとしなさいと突き放された子って、
愛情のかけ方が不器用です。
ありがとうや、ごめんなさいが言えないの。
うちの子もそうなんです。
ものすごくしっかりしているんだけど、愛情不足だったと思います。
他人に対する甘やかし方を教えてあげられなかった。」
?:「どうして、そうなっちゃったの?」
T:「私がアトリエを始めた理由って、
娘にお友達がたくさんいたら嬉しいな。という理由だったのです。
でも、いざ始めてみると急に忙しくなり、
お客様としての生徒さんを優先させてしまったの。
私がもっと理解のある母親なら、
彼女のことを立てて甘やかして、
いくらでも愛情をかけられたはずなのに、
一番後回しにしてしまったり、我慢させてしまったり。
こればかりは、どんなに悔やんでも後の祭りなんですけど。
実は自分も同じように育てられているんですよね。
ピアノ教室をしていた母は、
自分の子ども達にはとてもスパルタで、
生徒さん達には優しかったの。
最初は生徒さんの面倒を見たり、
一緒に遊んだりして楽しかったのですが、
徐々に自分の居場所は無くなってしまいました。」
?:「イツキちゃんも辛い思いをしていて、
でもお子さんにも同じことをしてしまったのね。」
T:「私は娘が望まないことでは過保護に接したけれど、
彼女の自分本位が許せなかったり、
本人が本当に聞いて欲しい願い事は聞いてあげられなかったの。
結局のところ思い通りに支配して育てたかったのね。
自分が正しいと思って譲らなかった。
愛情のかけ間違いって難しいです。」
?:「私もそうかも…」
T:「我が儘であることを許され、受け入れてもらった子って、
大人になって、他人を受け入れようとします。
一方、年老いた親に命令調で支配しようとする人は、
子どもの頃にそう言う扱いを親からされているんですよね。」
?:「親子って鏡なんですねぇ…」
T:「子ども達は、自分が我が儘だなんて思ってもいません。
どうしてか分からないけれど、そういう言動になってしまう。
そうした時に大人の反応から、
未来の自分の態度を学ぶわけなんです。
うちは親が両方とも教員経験者だったこともあり、
子どもは教育するもの、言うこと聞かせるもの。という感じが強かったのです。」
?:「学校の先生のお子さんって、
結構苦しむ人が多いと聞きますが、
愛情のかけ方が、生徒に対するのと一緒になっちゃうんですね。」
T:「後になれば、どうしてあそこでこうしてあげられなかったの?と、
悔やむことばかりですが、その時は必死だから気がつかないんですよね。」
お子さんの甘えん坊は、一見すると短所に見えます。
けれど、逆に愛情をかけられる人になる才能に変わるということをご理解頂きたいのです。」
【才能の特徴と対処法】
◆この才能の特徴(短所として現れる)
・甘えん坊
・親の身体に寄り掛かる
・ベタベタする
・願い事を叶えてもらうと機嫌が直る
・気分屋
・自己中心的
・離れるとメソメソする
・人に頼る(荷物を持ってもらう、送ってもらう)
・まとわりついて離れない
・褒めてもらいたがる
◆短所に見える状況の対処法
?:「そうすると、荷物を持つのは嫌だと言ったら、
持ってあげれば良いの?」
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T:「お母様が無理なくできるなら。
お母様自身も辛くなっちゃダメなんですよ。」
?:「難しいなぁ…」
T:「難しいですよね。
お母様ご自身が疲れていてイライラしていると、
なかなか受け止めてあげられないのです。」
?:「ホントだ。自分がしてもらっていないことって出来ないのね。」
T:「そうなんです。
よく考えれば、優しくしてあげた方が良いに決まっているのです。
でも、反射的には自分がされたように対応してしまうものなのです。」
?:「ああそうか、こんなに優しい、
愛情豊かな大人になってくれたら嬉しいと思う行為を、
親が身をもって示すのですね。」
T:「全くその通りです。
優しくされたことって覚えていますから。
でも、なんでもかんでも甘やかすと言うのとはちょっと違うんです。
守るべき法やマナーは教えてあげた方がお子さんのためになります。
けれど、大切なのはお子さんの甘えたいと思い気持ちを、
否定したり非難したりしないということです。
対処方法を教えてあげるイメージです。」
◆エネルギーの発散方法
?:「親も子もストレスにならないように、
子どもの短所を才能に変えるためにはどうすればいいですか?」
T:「男女問わず、綺麗なものや可愛いものが好きですから、
一緒におしゃれやファッションを楽しんでください。」
?:「そうか、だから男の子でも、
保育士さんや美容師さん、メイクアップアーティストになりたい子がいるのね。」
T:「カラフルで愛のある世界をたくさん経験させてあげると良いですよ。
綺麗な色がたくさんあるテーマパークやお花屋さんも喜ぶと思います。
ぬいぐるみや人形、小動物のお世話も才能を育てると思います。」
?:「そう言えば前からウサギを飼いたいと言っていました。
週末に早速ペットショップに行ってきます。
我慢させるんじゃなくて、愛情をかける喜びを伸ばしてあげれば良いのね。」
◆アトリエの授業では
T:「この才能を持つお子さんは、プレゼントを工作で作るのが大好きです。
ラッピングとか、デコレーションなども。
展覧会の題材も、ケーキ屋さんとかお洋服屋さんとか作りますね。」
?:「ほんとにピンクっぽいイメージですよね。」
T:「ふわふわしたパステル画も大好きです。
ご自身も髪型や靴などに気を使いますね。
少し大きくなると自分でアクセサリーや髪飾りを作ります。」
?:「確かに、うちの子はそういうことが大好きです。」
T:「甘えという行為を大切にしたいので、
ご褒美をあげたり、絵の具の水を汲んであげたり、
コートを着せてあげたりします。」
?:「イツキちゃんが?それは甘やかしでしょう?」
T:「いいえ、違うんです。
彼ら彼女らが、大人になった時にどう振る舞ったら才能を使えるか、
やって見せているだけなの。
眠いと言い始めたら、枕になってあげようと手を差し出します。
ぎゅーって抱きしめてくれる子や、膝に乗ったり寄りかかってきたり、
プレゼントをくれる子もいますよ。」
?:「なるほど、どうやって人を甘やかせば良いのか学習しているだけなのですね。」
T:「そうなんです。本人たちは無意識ですから、もちろん悪気なんてありません。
だから怒らないであげてくださいね。」
?:「今までいっぱい怒っちゃった。どうしよう…」
T:「大丈夫ですよ。愛情深い子達ですから。
ごめんなさいって言えば、良いよって許してくれます。」
◆将来に活かせる道
?:「この才能はどんな仕事に生かすことができるの?」
T:「そうですね、愛らしいものや綺麗なものが大好きというと、
どんな職業が思いつきますか?」
?:「お花屋さんとか保育士さんとかかしら?」
T:「良いですね。愛情をかけたサービスは得意です。
創造活動に生かすなら、どんな職種でしょうか?」
?:「可愛いとか甘い感じよね…
パティシエとかメイクアップアーティストなんて似合うかな。」
T:「確かに!
ファンシーショップのグッズのデザインも出来そうですね。」
?:「だったら、可愛い系のドレスやアクセサリーのデザインも良いかも。
ランジェリーとか。」
T:「確かにその通りですね。
そういった商品を販売するお店の店員さんも良いと思います。
ペットショップの店員さんも良いですね。
仕事に限らず、皆に愛されて他人や他の生き物にも優しくでき、
愛を込めて抱きしめ、励ます言葉をかけられる素敵な才能なのですよ。」
?:「そうかぁ!だから甘えた時にどうやって大人が反応を返すかは、
とても大切なことなんですね。」
【お母さま達へのエール】
T:「この才能を持つお子さんのお母さまは、
甘えん坊のお子さんに自立心を促すことが大変です。
けれど、愛情たっぷりに育てると、
他人に対して愛を与えられる献身的な大人になります。
だから、是非この才能を育てる子育てをしてみて下さい。」
?:「なるほど!よく分かりました。
今まで叱ってごめんね。と、子どもに謝ります。
イツキちゃんありがとう!」
T:「こちらこそ!
話を聞いて下さってありがとうございます。
お子さんが心身ともにそばにいてくれるのは、
高学年になるまでの10年くらいであっという間です。
限られた時間を楽しくご一緒に過ごして下さいね^^。」
〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜
第9回「甘えん坊で依存的なのは、
愛情や献身的であることの才能の芽」を、
最後までお読み頂きありがとうございます!
ベタベタ甘えたりすぐに人に頼ったりする子を、
自立心旺盛な子になるようにと今まで一生懸命に叱ってきたお母様。
努力をしない要領の良さが気に入らないし、
ご自身の中には無い要素と思っても、
叱らない方が良い訳をお分かり頂けたでしょうか?
このコラムでは叱らなければいけないと思っている短所の多くが、
どんな才能に成長するかをお話しさせていただきます。
次回は内弁慶で自信がないお子さんの才能です。
ついついイラついたりムカついたりして怒ってしまうような、
お子さんの問題行動や直らない癖。
そんな短所に困っているお母様は、
「これってどんな才能なの?」と、質問してくださると嬉しいです。
出来るだけ状況を詳しくお書きくださいね。
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