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第10回「内弁慶で自信がないのは、共感性や洞察力の才能の芽」 〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜 文:小鳥遊 樹(たかなし いつき)  イラスト:air,(エア)

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※こんにちは、小鳥遊 樹(タカナシ イツキ)です。
子どもの造形絵画教室を主宰して24年目になります。
これはお母さん達の子育ての悩みを、
会話形式で説明・解決していく子育てコラムです。
文中のエピソードや登場人物は、
筆者の経験を元に、個人情報がわからないように変えてあります。
あらかじめご了承ください。

【お母さまの悩み】

?:「どうしてうちの子って
自分の言いたいことを人前で言えないのかしら?

 

家の中では結構言いたいこと言って
突っ込みが激しいくらいなのに、
外に行くと一言も話さないの。

 

待っていてくれるお友達にも申し訳ないし、
早く話しなさいって怒るんだけど。
言えばいうほど黙りこんじゃうのよね。
もう毎日、毎日叱りきれないんですけど…」

 

T「待って待って、叱らないで!
その短所、お子さんの才能ですよ。」

 

?:「あらイツキちゃん。
うちの子の内弁慶は才能じゃないわよ。
単純に自信がなくて恥ずかしがり屋なだけなの。」

 

T「いえいえ、そんなことはありません。
大切に育てると共感性や洞察力の才能の芽になります。」

 

?:「共感?洞察?
だって、何も言わないのよ。
共感しているかどうかなんて分からないじゃない。」

 

T「今ではありません。
じっと観察をして、感じて、内側でゆっくり育てているのです。」

 

?:「えー?そんな大層なものじゃないわよ。
人の気持ちが分かるなら、
自分が押し黙ることで人を待たせたり、
話しかけられるのを嫌がったりしないでしょう?」

 

T「とても繊細な才能なので、
使える能力として育てるのは時間がかかるのです。」

 

?:「ホントに使えるようになるの?
不安しかないんですけど。」

 

T「大丈夫です。否定さえしなければ。」

 

?:「どうしてあなたはそうなの?
自己主張しなくちゃ誰にも認めてもらえないわよ。
そう言って、否定してばかりだわ。」

 

T「逆ですね。
自己主張しないことが、
武器になって人に認められるようになるのです。」

 

?:「逆に武器になる?」

 

T「そうです。
自分がありすぎる子は、
自己主張が激しい分、アウトプットに精を出します。
そうすると、人の心を読むとか、
動向を見定めるといった感覚が抜けるのです。」

 

?:「それは確かにそうかも。」

 

T「それが魅力になる一方で、
そういった修行をしていない分、
人の気持ちが分からないということにもなりがちです。」

 

?:「…私、親に言われたことがあります。
お前は人の気持ちが分からないって。」

 

T「どちらの才能もバランスが取れていると、
気にならないのですが、
今度は平凡になります。

 

突出していると言動を奇異に感じるので、
不安の材料になるのです。

 

でも、才能が強ければ強いほど、
自己主張しない期間は長くなると思います。
お子さんが意識してやっているわけではないので、
決して矯正しようとしないでくださいね。」

 

?:「直そうとばかりしていました。
うちの子の自信のなさは、欠点ではなく才能なのですね。」

 

T「お子さんは、お母さんがそれを不快に思い、
嫌悪感に感じても、どうすることもできません。
怒られれば混乱するばかりです。

 

決まり悪そうに下を向いているか、
自分の気持ちの中に閉じ込めるしかないのです。」

 

?:「考えてみればそんなことわざわざやりませんよね。
なんとなく甘えている気がして強く言ってしまっていました。
親である私の思いやりが足りませんでしたね。」

 

T「私がこの短所を才能の芽だと思った、
きっかけを聞いていただけますか?」

 

【才能の芽だと気付いたきっかけ】

?:「是非聞かせてください。」

 

T「アトリエにもずっと黙ったまま何も話さない子は、
いつの時代にも何人もいました。

 

授業中はもちろん、
皆がホッとしてお喋りを始めるおやつの時も、
静かにみんなの様子を見ているだけで何もしません。

 

待たされても怒ったりイライラしたりしないのです。
自分から声をかけるように促しても、じっと待っています。

 

また、アトリエではお子さんたちにいろんな質問をするのです。
夏休みはどうだった?などの簡単な質問です。
全員に同じことを聞くので、
順番が回ってくるのはあらかじめ分かります。
でも、どんなに待っても答えることが出来ないんです。

 

不貞腐れたり、反抗したりするために答えないのではありません。
でも言葉が出てこない。

 

みんな真面目で一生懸命な子達で、
笑顔が可愛くて優しい。
一つのことを長い時間かけて丁寧にする子達ばかりです。

 

お母さんにお聞きすると、
家では普通に話します。と、仰います。
そんな子達が本当に困っているの。

 

私は不思議に思いました。
こんなに話をしないのはどうしてなのだろうと?

 

けれどその子達は大きくなってから、
みんな観察眼の鋭い、しっかりした子になっていきます。

 

そしてまた、
そういう資質を持っているお母様方も、
本当に頼りになるのです。」

 

?:「お母さん達も?」

 

T「そうなんです。
私はガサツで、そういった面をほとんど持っていませんでした。

 

自分が苦しい時に、
気働きがあって優しい細やかなその資質に、
どれだけ助けられたことでしょう。」

 

?:「いませんでしたということは、後からでも育てられるの?」

 

T「はい、その資質をとても尊敬して学んだのです。
もともと、どの資質も一人の人間の中にはあると思うのです。
成長とともに、いろんな資質が顔を出します。

 

私は、自己主張の強い人間なので、
一度ぺちゃんこになってから学びました。
もっと人の気持ちを分かるようにと。

 

ただ、バランスが難しくて、
あまり人の気持ちを考えてしまうと、
今度は自分が持っている主張を強く出せなくなってしまうのです。
そうすると資質の才能が開花しない。
難しいことですね。」

 

?:「なるほど…
私は子どものためを思って、
一生懸命に短所を直そうとしていたのです。

 

でも、実は才能を丁寧に平らに伸ばして、
無くしてしまうことをしていたのね。」

 

Tお子さんの内弁慶は、一見すると短所に見えます。
けれど、実は優れた共感性や洞察力になるということをご理解頂きたいのです。

 

 

 

【才能の特徴と対処法】

この才能の特徴(短所として現れる)

・内弁慶(家では生意気)

・人前ですぐに話を始められない

・やる気や闘争心がないように見える

・考えをまとめるのに時間がかかる

・話しかけられてもリアクションがない

・みんなが待っていても返事ができない

・自分のことは後回しにする

・必要な状況でも自己主張をしない

・何を考えているのか分からない

・子どもらしい元気さや明るさがなくて臆病

 

短所に見える状況の対処法

?:「でもね、実際問題として、
学校の授業やお友達と遊ぶときに支障があるのよ。」

 

T「支障だと思っているのは、
自分に都合のある大人だけなんですよ。
待っている時間がないとか、次の予定があるとか。
子ども達は待っていてくれます。」

 

?:「結局気になって直したいのは、私だけなのか。
学校の先生も理解してくれているのよね。」

 

T「たくさんのお子さんを見ている人は、
お嬢さんの良さはすぐに分かりますから。
もちろんお母様の焦る気持ちもよく分かります。」

 

?:「つい、周りの反応が気になって急かしちゃうの。
ホントに怒ってばっかり。」

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T「それがですね、怒ってしまうとどうなるかというと…」

 

?:「答えが分かったわ。
無くさなくても良い自信をなくして、
大人になってもずっと内弁慶のままなのね。」

 

T「その通り!お母様さすがです。
ものすごく洞察力はあるのに社会で生かせないと、
その鋭い観察眼は、
年をとったお母様への批判や、
2次元の世界に向いてしまいます。

 

そんなの勿体無いですよね。
才能は仕事や生きる喜びで、
ご本人が楽しいと思うことに使わなくちゃ。」

 

?:「もう、絶対怒ったりしないように気をつけます。」

 

 

エネルギーの発散方法

T「そうですね。
大きくなるに連れて、
とても頼り甲斐のある聡明なお子さんになっていきますから。
焦らないで支えてあげてください。」

 

?:「気持ちをうまく表現できないと、
ストレスの溜まることも多いと思うのですが、
何か良い発散方法がありますか?」

 

T「この才能を持つお子さんは、
柔らかくて手触りが優しい布やフェルトとか大好きです。
毛糸で何かを編んだり、
刺繍をしたりするのも好きだと思います。」

 

?:「他にもありますか?」

 

T「料理を一緒にするとか、
時には任せてご馳走してもらうのも良いかも。
さり気なく人の役に立つことは、とても好きですよ。

 

スタンドプレーより、
人と気持ちを合わせる方が得意なので合唱も好きです。
好きな色も、他のどれとでも合わせやすい生成り色などを好まれるかと思います。」

 

 

アトリエの授業では

?:「アトリエではどんなことが好きなの。」

 

T「共感能力が高いので、どれも一生懸命やってくれるのです。
あんまり好きなことじゃなくても、
黙って協力してあげようという思いがすごく強くて、
申し訳なく思って余計に気遣いますね。」

 

?:「自分の立場より、周りの人の様子を見るのね。」

 

T「じろじろ見たりしないんですが、感じる能力が高いですね。
優しい色や材質がとても好き。
お菓子を分けるときにもさりげなく自分を最後にします。

 

気配を消して地道に集中することも得意です。
とても繊細なんですよ。」

 

?:「すごく大切にしなくてはいけない気になってきました。」

 

将来に活かせる道

T「この才能のあるお子さんは本を読む事が大好きです。
自分が得た知識を自慢したりはしないんですが、
人を助けるためには使います。
司書さんとか学芸員さんとか良いかも。」

 

?:「そうなんですね。
他にも大人になって生かせる職業がありますか?」

 

T「料理や調理はとても得意。
栄養士さんや管理栄養士さん、調理師さんなんかも似合います。
家事全般何でもこなせると思います。
掃除や子育てなども好きですね。

 

本当に信頼できる人にしか自分のことを話さないし、
口が堅いので秘密も守れます。
無駄な自己主張はせず、大抵は聞き役に回ります。

 

理不尽なことにも耐えられる忍耐力を持ち、
さらりと聞き流せます。
ここ一番の必要な時には、
とてもしっかりした芯の強さを持って、
人を励ますことのできる人達です。

 

人の悩みをじっと聞いてあげられるので、
カウンセラーや心理学系のお仕事や研究も良いと思います。」

 

 

 

?:「なるほど、そんな風に繋がる力を育てているのかと思うと、
今無理に話ができなくても良いと思えます。」

 

T「人を助けたい人たちですから、
子ども食堂とか、ボランティアなんかも良いでしょうし、
整理整頓も得意だから、そういった関係のお仕事もできます。

 

人の体に触れて癒すこともできるので、
介護やマッサージとかも良いですね。
とても優しい素晴らしい資質です。

 

繊細なので、アロマテラピストやリフレクソロジストなども
しっくりくるのではないでしょうか?

 

どちらかと言えば女性っぽい感じがするかも知れませんが、
こういった資質を持っている男の子もたくさんいます。」

 

 

【お母さま達へのエール】

T「この才能を持つお子さんのお母さまは、
なかなか自分では人前で話をしないお子さんの世話で大変です。
けれど、否定せずに愛で育てると素晴らしく優しい共感性と、
人を助けるための洞察力を持ったお子さんになります。
だから、是非この才能を育てる子育てをしてみて下さい。」

 

?:「なるほど!よく分かりました。
今まで叱ってごめんね。と、子どもに謝ります。
イツキちゃんありがとう!」

 

T「こちらこそ!
話を聞いて下さってありがとうございます。
お子さんが心身ともにそばにいてくれるのは、
高学年になるまでの10年くらいであっという間です。
限られた時間を楽しくご一緒に過ごして下さいね^^。」

 

 

第10回「内弁慶で自信がないのは、共感性や洞察力の才能の芽」
〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜を、
最後までお読み頂きありがとうございます!

 

人前で話をしようとせず求められても発言をしない子を、
もっと自信を持たせたいと今まで一生懸命に叱ってきたお母様。

 

将来が不安だからもっと発言をさせたいと思っても、
叱らない方が良い訳をお分かり頂けたでしょうか?

 

このコラムでは叱らなければいけないと思っている短所の多くが、
どんな才能に成長するかをお話しさせていただきます。

 

次回は意地汚いとかお金に執着があるお子さんの才能です。

 

ついついイラついたりムカついたりして怒ってしまうような、
お子さんの問題行動や直らない癖。
そんな短所に困っているお母様は、
「これってどんな才能なの?」と、質問してくださると嬉しいです。
出来るだけ状況を詳しくお書きくださいね。

 

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