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第15回 オモチャを貸してあげられない子、どうしたらいい?「気持ちが狭く潔癖なのは、博愛や厳格さの才能の芽」 〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です。〜 文:小鳥遊 樹(たかなし いつき)  イラスト:air,(エア)

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※こんにちは、小鳥遊 樹(タカナシ イツキ)です。
子どもの造形絵画教室を主宰して24年目になります。
これはお母さん達の子育ての悩みを、
会話形式で説明・解決していく子育てコラムです。
文中のエピソードや登場人物は、
筆者の経験を元に、個人情報がわからないように変えてあります。
あらかじめご了承ください。

【お母さまの悩み】

 

?:「どうしてうちの子って心が狭いのかしら?
おもちゃなんかも、自分のものは下の子達に貸してあげないし。
異様に自分のテリトリーを気にするの。

 

食べるものも他の人が口をつけたものとかダメなのよ。
子どもなのに潔癖すぎてついていけない。

 

そんなに神経質にならなくても大丈夫だし、
もっと心を広く持ちなさいって叱るんだけど、
すごく頑固なの。」

 

T「待って待って、叱らないで!
その短所、お子さんの才能ですよ。」

 

?:「あらイツキちゃん。
うちの子の心が狭いのは才能じゃないわよ。
他人に対して優しくないだけなの。

 

優しくないわけじゃないんだけど、なんていうのかな…
うん、やっぱり心が広くないのよね。」

 

T「いえいえ、そんなことはありません。
大切に育てると博愛や厳格さの才能になります。」

 

?:「イツキちゃん、私の話しを聞いていた?
あの子は他の人を自分の近くに寄せるのが大嫌いなのよ。

 

産んだ私でさえ、距離を感じることがあるもの。
博愛なんて真逆じゃないの。」

 

T「確かにその通りですね。」

 

?:「それになんだか偉そうなの。
子どもなのに、“ここが汚れているよ!”とか、
“ちゃんと洗濯した?”とか、余計なことを言ったりするのよ。
意地悪なおばあちゃんみたいで嫌になっちゃう。」

 

T「どうして汚れが嫌で気になったり、
自分のものは自分だけが管理しないと気が済まないんだと思いますか?」

 

?:「どうしてって、
そういう性格だからでしょう?
なんかに役に立つの?そんなこと。」

 

 

T「なんの役になら立つと思いますか?」

 

?:「汚れが気になる?菌がいない…か。
清潔なお仕事に就くとかですか?」

 

T「素晴らしい!正解です。
他にはいかがですか?」

 

?:「自分だけで管理するかぁ…。
そうか、責任感に変わるのね。」

 

T「大当たりです。
例えば飛行機の部品とか一個なくても大ごとになるでしょう?」

 

?:「ああ、なるほどね。
意固地なほどの清潔に対するこだわりとか、
整然と順番を守る事で生かされる才能があるんですね。」

 

【才能の芽だと気付いたきっかけ】

 

T「私がこの短所を才能の芽だと思った、
きっかけを聞いていただけますか?」

 

?:「そうね、参考になるなら。」

 

T「アトリエに通うお子さんでもいらっしゃるんです。
“先生、掃除したの?ここが汚いよ。”とか、
“机の下が汚れているね。”とか指摘する子どもさんって。
あとは電気のスイッチを消すとか、
物を置く場所にこだわる子もいます。」

 

?:「え?人の家にまで行ってそんなことを言うの?
困るわ。うちの子は大丈夫かしら?」

 

T「私も最初のうちは心の中で、
“うるさ〜い”と思っていました。

 

でもそうは言いたくないから、皮肉混じりに、
“そんなに気がつく、
あなたのお部屋は綺麗なんでしょうね。”と言うと
なんか反応に違和感があるんです。

 

自分の言っていることと、
自分の行いは結びついていないという感じでしょうか。
“はい、ピカピカです!”って言う子は、いないんです。

 

でも、人の家の汚れや行動は気になる。
これはなんなんだろうな?と不思議に思いました。
傷つけるために嫌味を言ってやりたいとか、
そんな性格の子たちでは全然ないので。」

 

?:「イツキちゃんのすごいところって、
まずその子を良い子という目でみるところだわよね。
私は自分の子でもそんな風には思えないわ。」

 

T「いいえ、私も自分の子には怒っていました。
“生意気を言うな、自分はなんなの?”と。

 

距離が近いからですよね、きっと。
娘には申し訳ないことをしました。」

 

?:「なるほどねぇ。」

 

T「とにかく、その子達に悪気はないんです。
でも口に出さずにはいられない。

 

どこかに何か理由があるんだなぁって思いました。
で、お母さんに聞いてみるんです。
お部屋キレイですか?って。」

 

?:「そうすると?」

 

T「とんでもない!と返ってきます。

 

子どもたちの行動を良くみていると、
汚れているところを黙ってふいてくれる子とか、
他の子が汚したテーブルを片付けに行ってくれる子がいるんですが、
気が付いてやってくれる子は、文句を言わないんですよ。

 

言葉にして指摘しないの。
それどころか出来るだけ目立たないように、
ささっと掃除してくれるんです。」

 

?:「えええ?どういうこと?」

 

T「過剰に気にしたり、指摘をしたりしていた子達が、
大人になって卒業をしていくでしょう。

 

どういうことなんだろうと思いながら見ていたら、
口に出して言っていた子って、職人気質な学校に行くんです。
つまり、用具や器具は、清潔で整然と置かれていなければならないような。

 

例えば技術や医療、調理なんかの学校とか。
ああなるほど!
自分の才能を生かすのに必要な行動なんだって思いました。」

 

?:「確かに医療や調理で、汚くて雑然としているのが平気な人だと、
器具や道具が、ばい菌だらけになっちゃうものね。」

 

T「そうなんですよ。
だからあんなにきちんと順番に並んでいることにもこだわるんだと分かったんです。

 

才能の芽って強いなと思いましたね。
そういうことが分かるまで、何を偉そうに!と思っていて。
子ども達にも申し訳ないことをしました。」

 

?:「なるほど腑に落ちました。
でも気持ちが狭いことが、博愛の才能とは、どんな理屈ですか?」

 

T「人っていろんなエネルギーを出しているでしょう?
優しそうで癒されたり、怒っていて緊張させられたり。」

 

?:「ええ、イライラしている人のそばとか近寄りたくないです。
こっちも影響されて、なんか落ち着かなくなりますから。」

 

T「人がたくさん集まる人ほど、エネルギーも集まるでしょう?」

 

?:「ああ、確かに。
人ごみで影響されて、頭やお腹が痛くなる人もいるくらいですよね。」

 

T「そうなんですよ、だからバリアを作る必要があるんだなって。」

 

?:「人を寄せ付けないようにして、自分を守る必要があるということですか。」

 

T「長い間多くの人が魅了される人は、自分を大切にする人だと思うの。
みんなが意識を向けても、自分の領域には入らせないっていうのかな。
そうじゃないと潰れちゃいますしね。」

 

?:「確かに。
人の感情にいちいち影響を受けていたら、話しにならないですものね。」

 

T「共感能力が高すぎると、同化しちゃうでしょう?
相手の悲しみや苦しみにリンクしすぎるから。

 

でも博愛って、その人の痛みを自分の身に感じて、
エネルギーを消耗していると続かないのです。」

 

?:「エネルギーを差し上げるって、
自分も一緒になって弱っていちゃダメですものね。
だから博愛かぁ。」

 

T「不思議に思いませんか?
一日に何千人と握手しても疲れない人がいるなんて。

 

多くの人に求められて一挙手一投足を注目されながら、
なおかつプライベートも充実できるなんて。」

 

?:「私だったら寝込んでしまうと思います。
自分のテリトリーをきちんと持っていないと出来ない。
だからそれも才能なのですね。」

 

T「どこかで公と私を切り替えられる能力ですね。
そう言ったことに育っていく芽なのだと思っています。

 

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それができない人は、ストレスを背負いすぎて潰れちゃいます。
仕事以外は引きこもってバランスをとる人も多いと思います。

 

小さい頃から、自分は自分、人は人という線引きができていたお子さんって、
一見ドライな感じがするのですが、
大きくなると例えば先生とか、たくさんの人を愛して指導する立場にいるのです。

 

お子さんの潔癖症や心が狭いは、一見すると短所に見えます。
けれど、実は厳格さや博愛の才能になるということをご理解頂きたいのです。

 

 

【才能の特徴と対処法】

この才能の特徴(短所として現れる)

・気持ちが狭い

・自分の物と他者の区別に神経質

・柔軟性が無い

・薄情

・潔癖すぎる

・人を許せない

・冷淡

・無関心

・完璧主義すぎる

・俗っぽいものを毛嫌いする

 

短所に見える状況の対処法

 

?:「そうすると、もしこの才能を叱って育ててしまうと…」

 

T「ものすごく神経質な、気持ちの狭い人になります。
自分にも厳しいけれど、人のことも許せないという感じです。」

 

?:「確かにそういう人いますよね。
すごく掃除が好きなのだけど、人にも強要するから嫌われています。
仕事ができるから、他の人を攻撃しなければ尊敬できるのにね。」

 

T「気持ちの狭いのを叱ると、排他的なのが強化され利己的になります。
利他的な博愛を発揮できずに、せっかくの才能の芽が枯れてしまう。
勿体ないことです。」

 

?:「でも、どうしてそれなら最初から寛容で多くの人に優しくないの?
最初からそうだったら、枯らす可能性が低くなるじゃない。」

 

T「そうですよね。
やはり、実験の必要があるからだと思います。
どのくらいの距離感であれば、自分の能力が適正に発揮できるのかとか。
最初から“みんな大好き!”をしてしまうと、抱えきれなくなっちゃうでしょう?

 

お掃除が好きになるということに関しても、
例えば、汚れが目に付く。
目に付くのを指摘する。
指摘したのをうるさいと叱られると、人のことも攻撃するようになります。

 

けれど、汚れが目に付く。
目についたのを指摘すると、よく気がついたねと認められる。
そうすると清潔にするのが好きになるじゃないですか。
仕事にするなら、好きじゃないとダメですよね。」

 

?:「最初は口だけであっても、大目に見てあげないといけないのですね。
気持ちが良いと思って清潔にできないと、
仕事としては中途半端になりますもんね。」

 

T「子どものうちは、
プライド育てをしているんじゃないかなって思うの。

 

整理する事、掃除する事、整然と美しく整える事。
厳格なルール、掃き清められたような神聖さ。
そうすることが好ましいという感受性ですよね。」

 

?:「下の子におもちゃを貸してあげないのは、
どうすれば良いんですか?」

 

T「 “貸してあげなさい。あんたは意地悪なんだから。”と、
怒ったり人格を否定したりしないで下さい。」

 

?:「だけど、それは良くない振る舞いだって、
教えてあげなくちゃいけないでしょう?」

 

T「否定はしないけど、価値観は差し上げるという感じです。
どうして貸してあげられないんだろうね?
でも、あなたがそうするからには、なにか理由があるんだよ。

 

それは大きくなってから、
人を幸せにできる才能に変わっていくから楽しみにしていてねと。

 

貸してあげられないのは不思議だね。
でも今は貸したくないのだから仕方がないよね。

 

お母さんはその気持ちを大切にしたいと思う。
けれど、もし自分が貸してもらえなかったらあなたはどう思うかな?
その事も考えてみてね。と穏やかに伝えます。」

 

?:「そんなこと言えるかしら?心配になってきちゃった。

 

でも、子どもには子どもなりの理由があって、
意地悪とかではないってことですね。
今まで叱ってごめんねと、子どもに謝りたいと思います。
イツキちゃん、ありがとう。」

 

T「こちらこそ話を聞いてくださって、
ありがとうございます。」

 

エネルギーの発散方法

 

?:「この短所のストレス発散方法とか、
才能を伸ばす遊びもあるんですか?」

 

T「キーワードは、
“掃き清めたように美しく”とか“整然とした”です。
何があると思いますか?」

 

?:「掃除や整理ぐらいしか思いつきません。」

 

T「整理や掃除を趣味にするって最強です。
一生の財産になりますよ。
断捨離遊びとかいいかもしれませんね。

 

このおもちゃ箱からどれだけゴミを作るか?
リサイクルに回して資源にするか?のような。
怒られてやるのでなければ、遊びと仕事の区別って子どもにはないのです。

 

日本庭園とか神社や教会に行くのも心が落ち着くと思います。
景色を見たりお茶をしたりも一緒にしたら、
良い思い出になりますよね。」

 

?:「玉砂利とか好きそうです。」

 

T「キラキラしたものや透き通って美しいという、
イメージならばどうでしょうか?」

 

?:「そうですねウインタースポーツとか、
ガラス細工なんてどうですか?」

 

アトリエの授業では

 

T「ああ、とても良いですね。
アトリエだったら、雪遊びとかキャンドル作り。
とんぼ玉や勾玉を作るとか、万華鏡作りなどですね。

 

岩絵具タッチになるようなメディウムを混ぜて、
板絵を描いてもらった事もあります。
あと、隅をきっちり合わせるような折り紙なども良いと思います。」

 

?:「どれもうちの子が喜びそうです。」

 

将来に活かせる道

 

?:「この才能が生かせるのって、
例えば、どんな仕事ですか?」

 

T「そうですね。
看護師・救助隊・神職・薬剤師・助産師・清掃業者・
日本料理の調理師・臨床検査技師とかそんなイメージでしょうか?

 

清潔である事、厳格である事、多くの人を助けられる事。
それから、責任を持って順序よく遂行していく仕事などが
あげられると思います。
器用で繊細で、かつ大胆さが求められますよね。」

 

?:「どれも、だらしない性格だったりゴミゴミしていたら、
成り立たない仕事ばかりです。

 

なるほど、そうやって考えれば、
子どもの口うるささや神経質すぎるところ、
他の人に優しく出来ないことも上手く受け止められそうです。」

 

 

【お母さま達へのエール】

 

T「この才能を持つお子さんのお母さまは、
神経質に口うるさい子どもに優しくするのが大変です。
けれど、この短所を育てると博愛や厳格な才能になります。
だから、是非この才能を育てる子育てをしてみて下さい。

 

お子さんが心身ともにそばにいてくれるのは、
高学年になるまでの10年くらいであっという間です。
限られた時間を楽しくご一緒に過ごして下さいね^^。」

 

第15回「気持ちが狭く潔癖なのは、博愛や厳格さの才能の芽」
〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜を、
最後までお読み頂きありがとうございます!

 

他の人にものを貸してあげられないとか、
異常なまでのキレイ好きなお子さん。
もっとおおらかにみんなに優しくと一生懸命に叱ってきたお母様。

 

神経質だし意地悪だわと思っても、
叱らない方が良い訳をお分かり頂けたでしょうか?

 

このコラムでは叱らなければいけないと思っている短所の多くが、
どんな才能に成長するかをお話しさせていただきます。
次回は今までお話してきた1回目から15回目までのまとめです。

 

ついついイラついたりムカついたりして怒ってしまうような、
お子さんの問題行動や直らない癖。
そんな短所に困っているお母様は、
「これってどんな才能なの?」と、質問してくださると嬉しいです。
出来るだけ状況を詳しくお書きくださいね。

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作者:小鳥遊 樹さん

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本記事は個人的体験談などに基づいて作成されており、脚色なども加えられている場合もあり、必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。この記事の情報を用いて行動される場合、ご自身の責任と判断により対応いただけますようお願い致します。尚、記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。
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