第14回 ぼんやりした子はどうしたらいい?「地味で反応が薄いのは、根気や地道さ、集団の中で信頼を得られる才能の芽」 〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜 文:小鳥遊 樹(たかなし いつき)  イラスト:air,(エア)

   

 

※こんにちは、小鳥遊 樹(タカナシ イツキ)です。
子どもの造形絵画教室を主宰して24年目になります。
これはお母さん達の子育ての悩みを、
会話形式で説明・解決していく子育てコラムです。
文中のエピソードや登場人物は、
筆者の経験を元に、個人情報がわからないように変えてあります。
あらかじめご了承ください。

【お母さまの悩み】

 

?:「どうしてうちの子って、いつもぼんやりなのかしら?
悪い子じゃないんだけど、反応が薄いっていうのかな。

 

返事もしないから、聞いているのかいないのか、
理解しているのか、いないのかもよく分からないのよ。
ハキハキと自分の意見が言えるお友達が羨ましくて。

 

もっと真剣に一つのことに打ち込んでみたらどうなの?と、
気合が入りそうなお稽古事に誘ってみるんだけど興味なし。

 

いつでも、ぼーっとしているか本を読んでいるの。
もう毎日、毎日叱りきれないんですけど…」

 

T「待って待って、叱らないで!
その短所、お子さんの才能ですよ。」

 

?:「あらイツキちゃん。
うちの子のぼんやりは才能じゃないわよ。
単純に何も考えていないだけなの。」

 

T「いえいえ、そんなことはありません。
大切に育てると地道さや根気、集団の中で信頼される才能になります。」

 

?:「えー?根気なんてかけらもないわよ。
そもそも何にも興味を持たないのだから。
地味な子で、人の陰に隠れてばかり。
キラリと光る才能みたいなものがカケラもないの。
ホントに将来が心配だわ。」

 

T「そうなんです。
この短所を持つお子さんは、
子どもらしいとよく言われるような元気さや明るさとは無縁で、
暗くてやる気がないように見えるのです。」

 

?:「あのねイツキちゃん、
見えるんじゃなくて、ホントにやる気がないの。
どんな習い事を勧めても、
えーとか、うーとか、よく分からない返事をしていて、
何をしたいのかさっぱり分からないわ。

 

家族で遊びに行く時でもそうなのよ。
どんなに楽しいことをこちらが考えても、
喜んでくれないから、張り合いがないの。」

 

T「そうですね。
大人は、目に見える成果とか反応がないと戸惑いますものね。」

 

?:「ほら、やっぱりそうでしょう。
あの子が自信を持って堂々と振る舞えるような、
何かを身につけさせたくて、いろいろ考えるんだけど、
やればやるほど、どんどん引っ込み思案になっていくの。

 

最近はお出かけに行くのも、
僕は家にいるから、みんなで行ってきてくださいとか言い始めちゃって、
ホントに困っているのよ。」

 

T「この才能を持つお子さんは、
静かで目立たず空気のような存在なのです。
印象が薄いので、名前を忘れられたり、声をかけ忘れられたりします。

 

でも、それは本人が望んでやっている事ではなく、
どうしてか分からないけれどそうなってしまうのです。
だから、そこを否定されたら傷つきますよね。

 

本人の資質に反していろんなことに挑戦させられると、
自分のままでいては、いけない気持ちになってしまいますから。」

 

?:「本人は困っていないのに、
親だけが問題視をして焦っているということですか?

 

でもあのままじゃぁ、世の中に出てから困るわよ。」

【才能の芽だと気付いたきっかけ】

 

T「私がこの短所が才能の芽だと思った、
きっかけを聞いていただけますか?」

 

?:「そうね、参考になるなら。」

 

T「アトリエにもほとんど反応しないお子さんはいました。
最初の頃は、やっていることが楽しくないのかなぁと心配しましたが、
静かにずっと通ってくれるのです。
楽しみのテンションが違うんだなぁと思いました。

 

そんな子達が大きくなって、自分のことを語るようになった時に、
人から言われて動くことの方が好きという話をしてくれた子たちがいました。
その言葉は、人に命令されて動くのが絶対に嫌な私には目からウロコだったんです。

 

どういうこと?って、最初はうまく理解できなかったの。
自分の意志を殺して集団に従っているのだと思っていたので。
でも、そうではない人、むしろその方が心地の良い人もいるんだなぁって。」

 

?:「イツキちゃんは自分の考えで動きたいってことなのね。」

 

T「そうです。それが強すぎるから、集団や会社に所属するのが無理なんですね。
でも、世の中で圧倒的に多いのは、全体の意志で動くということじゃないですか。
一人一人が我流を通したら、業務に支障が出ることってたくさんあると思うのです。」

 

?:「それは本当にその通りね。
特に日本ではその傾向が強いような気がします。」

 

T「ぼんやりしているように見える子って、
自分の感情を出すのは苦手だしやりたいことがないようにも見えます。

 

でも、自分の資質に自信を持てる様になると、
芯が強くて、肝の据わった良い才能になるんです。

 

人の言うことは忍耐強く聞けるし、面倒な作業も気長に地道にこなせるし。
忠実にミッションが行えるというのは、信頼に繋がるんです。
そこに自分の持ち味を入れてこないから。」

 

?:「うわー、それってめちゃめちゃ仕事のできる人じゃないですか。」

 

T「自分の才能をよく知っていれば、自信が持てるから、
愚痴や不満を言ったりもしません。
チームの中で円滑に動ける人材は重宝されますよ。」

 

?:「でもそれって、結局AIとかにとって代わられる仕事になりませんか?」

 

T「ただの単純作業だけだといずれそうなるかもしれません。
でも、まずは自信を持たせてあげて、そこに本人が好きなことをプラスすれば、
AIを使いこなせる才能になると思うのです。」

 

?:「成果が目に見えなくても、否定しないことが大切なのですね。」

 

Tお子さんの地味でぼんやりなのは、一見すると短所に見えます。
けれど、集団の中で信頼を得られる、根気や地道さの才能になるということをご理解頂きたいのです。

 

 

【才能の特徴と対処法】

この才能の特徴(短所として現れる)

 

・反応が薄い(ぼんやりしている)

・好き・嫌いをはっきりさせない

・地味

・突出した個性が見えない

・感情の起伏がない

・自主性に欠ける

・自分の頭で考えることが苦手

・判断を他人に委ねる(人の言いなり)

・責任を持たない

・無気力に見える

 

短所に見える状況の対処法

 

?:「でもねぇ、イツキちゃん、
実際問題として、お友達も少ないし、
何を考えているか分からないから心配なのよ。」

 

T「そうですね。
学生の間は、特にこの才能の芽の良さが分かりにくくて、
親御さんも、あなたは何になりたいの?
もっと頑張りなさいなんて叱咤激励してしまいます。

 

でも、応援しようと思って資質を否定してしまうと、
どうなるでしょう?」

 

?:「もっと、話さなくなるし、反応がなくなるってこと?」

 

T「そうなんです。
子どもは、どうして自分が大きな声で話をしないのか、
明るい顔で笑わないのか、本当に分からないのです。」

 

?:「なのに、ずっと否定され続けていたら、
自信を失って地味で暗くなるわね。」

 

T「おっしゃる通りです。
一般的な子どもらしいというイメージは、
どこかで作られたものでしかありません。
あなたはそのままで素晴らしいと、
安心させてあげて欲しいのです。」

 

?:「確かに、本人のためを思って、
一生懸命、違う何かにしようとしていました。
随分ストレスを負わせてしまったかも。
何か、本人が楽になる方法ってあるんですか?」

 

エネルギーの発散方法

 

T「そんなふうに考えてくださって、ありがとうございます。

 

この才能は、自己表現をしなさいと言われることにストレスを感じるので、
単純なことで良いのです。
例えば、料理や整理、散歩とか、マラソンとか、山登りとか。」

 

?:「手順を覚えることや単調なことの繰り返しが心地良いのですね。」

 

T「はい、規則正しい機械の動きとかも好きだと思います。
子どもだったら、砂時計とか、振り子のおもちゃとか、けん玉とか、
一定のリズムを刻むものですね。」

 

?:「なるほど、根気が育ちそうです。」

 

T「家族でサイクリングに出かけたり、釣りをしたり、
カメラや読書なども気持ちがリラックスできると思います。

 

小さい子なら砂場遊びや縄跳び、
少し大きくなったら、時計を分解したり組み立てたりなんて作業も
面白がると思いますよ。」

 

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アトリエの授業では

 

?:「地道なことで、本人の気持ちにぴったりくるものを探せば良いんですね。
全然気持ちに合わないことばかりさせようとしていました。
アトリエではどんなことをするのですか?」

 

T「例えば砂絵とか切り絵。
自分で考えるものより、最初から絵や型があるものがいいですね。

 

模写や貼り絵も好きだと思います。
決まった作業を自分の気持ちの中に入ってコツコツできるものです。
やることが決まっているペーパークラフトのキットとか。」

 

?:「私が苦手なことばかりです。」

 

T「私もなんです。
どうしてこんなことをやりたがるのだろう?
なぜ、好きなんだろう?
そこが才能の芽を探す糸口でもありました。」

 

?:「この才能を持っている人にとっては、
心地良いことなのですね。まだありますか?」

 

T「教えてあげたことを、コツコツ丁寧に積み重ねていく作業なら、
どんな事でも好きだと思います。

 

クリスマス会ではけん玉大会もします。
自由に読書ができる様にもしてあります。

 

彫刻刀も使い方を覚えてしまえば、
慎重に丁寧に消しゴムハンコなどの作品を仕上げていきます。」

 

?:「この才能のある子は、どんな道に進むと良いの?」

 

将来に活かせる道

T「この才能を丁寧に育てておくと、
自分で好きなことを見つけて、その分野で特性を生かします。」

 

?:「決めない方が良いってこと?」

 

T「はい、逆に言えば、どんな分野でも必要な才能なんです。
例えば、ものすごい豊かな発想力があっても、根気がなければ形にならない。」

 

?:「ああ、確かに。
素晴らしい発見をする才能があっても、
失敗と挑戦を繰り返して、
地道に検証して論文にしないと発表できないですもんね。」

 

T「そうです、そうです、その通り。
人から指示される単純作業や、
決まりきったデスクワークも難なくこなせます。

 

そこにクリエイティブの才能が加われば、
例えば編曲とかシステムエンジニアなど、
時間がかかる様な仕事でも腰を据えてできるのです。」

 

?:「本当ね。
社会では、すごく必要な才能を持っているんだわ。
何だか今まで否定して申し訳ないことをしてしまった。
子どもに謝らなくちゃ。」

 

T「そんなふうに言って頂けると嬉しいです。

 

例えば図書を分類する様な司書さんのお仕事や学芸員、
膨大な量の書類手続きを行える公務員など、
信頼も必要なお仕事ですよね。

 

校正や編集もこの才能がないと、途中で投げ出してしまいます。」

 

?:「だから集団の中での信頼なのね。
やっと意味が分かったわ。」

 

T「最初から自信満々では養えない能力なのです。
人の言うことをどれだけ聞いていても自己主張しないって、
それだけでも、すごい才能です。

 

間違いがあっては支障が出る、
精密、電気工事、塗装業などの、
設備や整備関係のお仕事もそうですね。
勝手な順番でクリエイティブに車を組み立てられても困ります。」

 

?:「手順を守るって、安全を確保することでもあるものね。
そうやって考えると世の中に必要な才能なのね。」

 

T「とても重要な才能です。
繊細な才能なので、大切に育てて頂きたいのです。」

 

【お母さま達へのエール】

 

T「この才能を持つお子さんのお母さまは、
反応があまりないお子さんをどうすれば良いかと心配して大変です。
けれど、愛情を持って育てると、集団の中で信頼を得られ、
地道さや根気を発揮できる才能になります。
だから、是非この才能を育てる子育てをしてみて下さい。

 

?:「なるほど!よく分かりました。
今まで叱ってごめんね。と、子どもに謝ります。
イツキちゃんありがとう!」

 

T「こちらこそ!
話を聞いて下さってありがとうございます。
お子さんが心身ともにそばにいてくれるのは、
高学年になるまでの10年くらいであっという間です。
限られた時間を楽しくご一緒に過ごして下さいね^^。」

 

第14回「地味で反応が薄いのは、根気や地道さ、集団の中で信頼を得られる才能の芽
〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜を、
最後までお読み頂きありがとうございます!

 

反応が薄く地味で影が薄い子を
エネルギッシュな自信に満ち溢れた子にしようと今まで一生懸命に叱ってきたお母様。

 

どうしてそんなはっきりしない対応しか出来ないのと思っても、
叱らない方が良い訳をお分かり頂けたでしょうか?

 

このコラムでは叱らなければいけないと思っている短所の多くが、
どんな才能に成長するかをお話しさせていただきます。
次回は、気持ちが狭く、潔癖症のお子さんの才能です。

 

ついついイラついたりムカついたりして怒ってしまうような、
お子さんの問題行動や直らない癖。
そんな短所に困っているお母様は、
「これってどんな才能なの?」と、質問してくださると嬉しいです。
出来るだけ状況を詳しくお書きくださいね。

 

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