第7回「神経質で理屈っぽいのは、論理的で冷静であることの才能の芽」 〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜 文:小鳥遊 樹(たかなし いつき) イラスト:air,(エア)
※こんにちは、小鳥遊 樹(タカナシ イツキ)です。
子どもの造形絵画教室を主宰して24年目になります。
これはお母さん達の子育ての悩みを、
会話形式で説明・解決していく子育てコラムです。
文中のエピソードや登場人物は、
筆者の経験を元に、個人情報がわからないように変えてあります。
あらかじめご了承ください。
【お母さまの悩み】
?:「どうしてうちの子って神経質で理屈っぽいのかしら?
注意しても反抗的で、素直に話が聞けないの。
ひと言注意すると、3つぐらい屁理屈が返ってくるのよ。
何でもこっちに手伝わせるくせに、
自分の事ばかり優先させて優しくないの。
記憶力が良いものだから、妙に筋の通った反論することもあるし。
なんか偉そうで、嫌な感じ。
毎日、毎日叱りきれないんですけど…」
T:「待って待って、叱らないで!
その短所、お子さんの才能ですよ。」
?:「あら、イツキちゃん。
うちの子の屁理屈は才能じゃないわよ。
単純に偉そうに何かを言ってみたいだけなの。
口ばっかりで、実生活では役に立たないのよ。」
T:「いえいえ、そんなことはありません。
大切に育てると論理的で冷静な才能になります。」
?:「でもね、家の手伝いとか嫌がるし。
私に任せっぱなしで、
おまけに妙に言い方が上からなの。」
T:「一生懸命お世話をしているのに、偉そうにされたら嫌ですよね。」
?:「ちょっと、文句言ったりすると、
“この前と違う事を言っているよ。”とか、ツッコミが入るのね。
“大人の都合で、言う事を変えるのはおかしい”とか。
そんなのいちいち覚えてないし、
時間が経てば言う事だって変わるわよ。」
T:「確かに。」
?:「素直に返事をして、やる事やりなさいって言いたいの。
でも、そう言うと、“この間はそんな事はしなくて良いから、
勉強をやれっていったじゃん。”とか言うのよ。」
T:「まぁまぁ、落ち着いて。」
?:「ちょっと強く言うと、
黙り込んじゃって、何も話さなくなるの。
そのうちにお腹が痛いとか、頭が痛いとか言い出して。
そんな事言われたら、こっちは何も言えなくなるでしょう?」
T:「自分は正しいことを言っていると思っているのですものね。」
?:「そうね、確かに間違ったことは言っていない。
でも、偉そうにされる筋合いもないでしょう。
どうしてもっと謙虚に素直に、可愛くしていられないのかしら?
突っ込むところが細かすぎるのよ。
変なところに引っかかりを感じるというか。
そんなことどうだっていいでしょ、と言いたくなるのよね。」
T:「あなたの意見を聞いているわけじゃないから、
口を挟まず黙っていなさい、
という場面ってありますものね。」
?:「いちいち、これはああだから、こうだからってうるさいのよ。」
T:「お母さんのおっしゃっている事は、良く分かります。
けれど、考えることをやめさせて従わせるようにすると、
お子さんの尖った才能が削れちゃいますよ。」
?:「尖った才能って?」
T:「些細なことを、気がすむまで自分の頭で考える才能ですね。
“大人の言っていることに逆らうとか”、
“口答えをする”って、とても大事な才能の芽なんです。」
?:「私にはマイナスにしか思えないんだけど。」
【才能の芽だと気付いたきっかけ】
T:「アトリエにも、口答えをするお子さんはいたのです。
“先生、この前はこう言ったよ?”とか、
“これはこうした方が良いと思います”とか。
でも、こっちにも都合ってあるじゃないですか。
言っている事は分かるけどさ、
できない事情とか察してもらえないかな?みたいな。」
?:「それは、ホントにその通りね。」
T:「前はムッとして怒っちゃっていたんです。
あなたが口を挟む事じゃないとか、
私には私の考えがあるのとか。」
?:「そうなるわよね。」
T:「でも、なんだか反応が腑に落ちないんですよ。
そんなつもりで言ったんじゃないんだけど、
という反応なの。」
?:「がっかりしている感じで、
それもまたバカにされているみたいで嫌なのよ。」
T:「それで、ある時対応を変えてみたんです。
感謝してみたんですよ。
そうか、教えてくれてありがとうとか、
気がつかなくてごめんねとか。」
?:「そうしたら?」
T:「とても満足そうなの。
教えてあげたいだけなのね、と思って。」
?:「えー?
こっちが最初から分かっていることに感謝なんてできない!
こうするのがベストと思っていることを謝ったり出来ないわよ。」
T:「その場合は、すごく丁寧に説明をします。
○○ちゃんの言っている事はその通り。
だけど、私にも経済的な事情があってこうするしかないとか、
時間的には精一杯とか。
私も、自分の考えがあってやっている事なの。
だけど、そういう考え方もあるよね。
変えられないけれど、
あなたの考えていることを教えてくれてありがとうって。」
?:「めんどうくさい。
どうして子どもにそこまでしなくちゃいけないの?」
T:「大人はそんなこと言われなくても分かっているわ!
と、つい感情的になります。
けれど、子どもにとっては全てが新しいことでしょう?
思考をする才能のあるお子さんは、
とにかく口に出して言ってみたいのです。
言いたいだけで、悪気はありません。
これはこうだよね?と確認しているだけなのです。」
?:「でも、イツキちゃん。
私が努力してそうしたとしても、
学校や社会ではそんなわけにいかないのよ。
頭ごなしに怒鳴られたら、ギャップがあり過ぎない?」
T:「その場合、なぜ先生がそういう発言になるかという、
思考のプロセスを一緒に検証します。
私も、娘が担任の先生の発言を疑問に思った時には、
一緒に先生の立場に立って、
なぜそういう発言に至ったかを考えてみることにしていました。」
?:「それで?」
T:「例えば余裕がなくて感情的になっているだけだったら、
授業がしやすいようにみんなで助けてあげて、とお願いしていました。
その状況を良い方に変えるために、
娘に何が出来るのかを、いつも考えてもらうのです。」
?:「そうすると、思考力が育つのね。」
T:「リーダーシップも育ち、お話も上手になりますし、
論文も書きやすい頭になります。
自分の考えを組み立てられるようになることが大切なのです。
テストの点数が取れる知識だけだと、そういう応用って効かないでしょう?
だから、素晴らしい資質であり育ててあげて欲しい才能なのです。
お子さんの理屈っぽさや、神経質なところは、一見すると短所に見えます。
けれど、実は論理的で冷静な才能になるということをご理解頂きたいのです。」
【才能の特徴と対処法】
◆この才能の特徴(短所として現れる)
・理屈っぽい
・屁理屈を言う
・頑固、偉そう
・生意気
・口答えをする
・人の話に首を突っ込む
・神経質
・自分の意見を曲げない
・思い通りにならないとお腹や頭が痛くなる
・人に対して協力的ではない
◆短所に見える状況の対処法
?:「でも、屁理屈ばかり言われたら腹が立つでしょう?
生意気ばかり言うのを許しておくのも良くないと思うわ。」
T:「叱らなくても良いんです。
優しく同じ調子で伝えるだけで 。
怒ってしまうと感情的に屁理屈を言う子になります。
穏やかに思考の積み重ねが出来ないので。
理屈をこねたい資質はそのまま残るので、
筋の通らない議論を吹っかける人になりがちです。」
?:「なるほど、そういう人は自分の言っていることを、
理解して誉めてほしいのか。」
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T:「理論的な思考回路ができていないのに議論はしたいんです。
ネットの中にも、言っている事はメチャクチャなのに、
論破したがる人っているでしょう?」
?:「訳のわからない理屈で、人を謝らせたい人っていますよね。
そうなったら困るわ。
結局どうすれば良いってこと?」
T:「まず、お子さんの言っていることに、いちいち感情的にならない。
痛いところを突かれてもムッとしない。」
?:「はい…できるかしら?」
T:「時間をかけて、そうなっていることの意味や、
そうせざるを得ない理由を丁寧に穏やかに説明します。」
?:「忙しい私には無理かも…」
T:「その上で、お子さんの着眼点を褒められたらベストです。
よくそんなことに気がついたねって。
教えてくれてありがとうでもいいし、
気がつかなくてごめんねでもいいのです。」
?:「時間がかかるのねぇ。
どうして面倒な方で出ちゃうのかしら、
最初から見事に論破してくれたら尊敬できるのに。
怒られて萎んじゃう才能がいっぱいあると思うともったいないわね。」
T:「今の教育は、
言われたことを言われたように学ぶ教科がほとんどなので、
このような才能は育ちにくいですね。
屁理屈な疑問をぶつけられても、
授業の進行の邪魔になっちゃうので、
先生達も相手をしてはくれないだろうし。
気のすむまで、あれはこうですよね。
これはああですよね?と聞いたり言ったりする、
実験がたっぷりできる環境がないのです。」
?:「屁理屈を言うのは気になるけれど、否定しないことが大切なのね。
どうすれば、この短所のストレスを発散できますか?」
◆エネルギーの発散方法
T:「この才能を伸ばすためには、
例えば論理的な思考を養うために、ボードゲームはオススメです。
オセロに将棋、囲碁にチェス。
勝つために、何手先まで読むといった事は大いに役に立ちます。
歴史人物カルタとか、時代順の暗記、アプリの学習ゲームも好きだと思います。
子ども新聞を一緒に読むのもオススメです。
テレビのスペシャル番組でもありますよね。
なるほど、こういうことなのか!みたいな番組。
一緒に見て、あれこれ意見を言い合うのも良いですね。
考えを組み立てさせるのです。」
?:「なるほど、そのくらいですか?」
◆アトリエの授業では
T:「頭を使う、論理的に組み立てる。
冷静、知性、イメージだと青ですね。
どんなことが思い浮かびますか?」
?:「うちの子、図鑑が好きなのよね。」
T:「良いですね。
例えば魚の図鑑を見たら、水族館に行ってみるとか。
宇宙の図鑑を見たら、科学博物館とか。
歴史を学んだら、大江戸博物館とか。
アトリエの研修旅行でもしています。
戦国時代の工作を作ってから見に行くとか。
縄文時代の住居が好きな子は、考古学博物館に連れて行きます。
あとで、どんなことが印象に残っているの?と、
聞いてあげると良いですね。
一緒に文章にまとめるのもオススメです。
レゴブロックとか、ピアノとか、
透明水彩も似合うイメージです。
ボードゲームもみんなで楽しんでしますし、
偉人の言葉を暗記してもらったりもします。
ちょっと難しい、数字に関する本をお勧めしたりもします。」
?:「それなら家族で一緒に楽しめそうだわ!
早速試してみます。
この才能を伸ばすと、どんな職業の可能性に繋がるの?」
◆将来に活かせる道
T:「まず、学者ですよね。
論理的、知的で冷静、暗記力があって数字にも強いとなると、
医者や研究者も良いと思います。
創造性も生かすとなると、設計士や科学者でしょうか?
決まりきったことが好きなら公務員や団体職員も良いですね。
勝負師としても才能を発揮すると思うので、
囲碁棋士、将棋棋士、チェスやオセロのプレイヤーを経験してみても良いかも。
自営業をするのなら税理士、会計士、弁護士など。
教育関係ならば、学校の先生や家庭教師、塾や予備校の講師。
言葉を操ると言う意味で、評論家、新聞記者、ジャーナリストなどいっぱいありますね。」
?:「分かりました。
なんだかイメージができると落ち着いてきますね。
理屈っぽいとか神経質だなんて怒らずに、大切に育てたいと思います。」
【お母さま達へのエール】
T:「この才能を持つお子さんのお母さまは、
いちいち口答えをしたり、
生意気なことを言うお子さんに対応せねばならず大変です。
けれど、丁寧に落ち着いて理屈の説明をしながら育てると、
論理的で冷静にものを考えられる才能になります。
だから、是非この才能を育てる子育てをしてみて下さい。」
?:「なるほど!よく分かりました。
今まで叱ってごめんね、と子どもに謝ります。
イツキちゃんありがとう!」
T:「こちらこそ!
話を聞いて下さってありがとうございます。
お子さんが心身ともにそばにいてくれるのは、
高学年になるまでの10年くらいであっという間です。
限られた時間を楽しくご一緒に過ごして下さいね^^。」
〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜
第7回「神経質で理屈っぽいのは、
冷静で合理的であることの才能の芽」を、
最後までお読み頂き、ありがとうございます!
筋の通らないような理屈をこねたがったり、
人が気にならないような些細なことまで気にするお子さん。
大らかで子どもらしい子になるようにと、
今まで一生懸命に叱ってきたお母様。
面倒臭いし話をしにくいと思っても、
叱らない方が良い訳をお分かり頂けたでしょうか?
このコラムでは叱らなければいけないと思っている短所の多くが、
どんな才能に成長するかをお話しさせていただきます。
次回は言動が変わっていると言われてしまうお子さんの才能です。
ついついイラついたりムカついたりして怒ってしまうような、
お子さんの問題行動や直らない癖。
そんな短所に困っているお母様は、
「これってどんな才能なの?」と、質問してくださると嬉しいです。
出来るだけ状況を詳しくお書きくださいね
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本記事は個人的体験談などに基づいて作成されており、脚色なども加えられている場合もあり、必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。この記事の情報を用いて行動される場合、ご自身の責任と判断により対応いただけますようお願い致します。尚、記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。