第11回「意地汚くてお金に執着があるのは、篤志家や商売の才能の芽」 〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜 文:小鳥遊 樹(たかなし いつき) イラスト:air,(エア)
※こんにちは、小鳥遊 樹(タカナシ イツキ)です。
子どもの造形絵画教室を主宰して24年目になります。
これはお母さん達の子育ての悩みを、
会話形式で説明・解決していく子育てコラムです。
文中のエピソードや登場人物は、
筆者の経験を元に、個人情報がわからないように変えてあります。
あらかじめご了承ください。
【お母さまの悩み】
?:「どうしてうちの子って意地汚くてちゃっかり者なのかしら?
他の子より少しでもたくさんおやつをもらおうとするし、
もらったお小遣いは使わないで、
欲しいものは私に買わせようとするし。
子どものうちからあんなにガメツイと心配。
遠慮ということを覚えなさいって怒るんだけど、
言った端から、
冷蔵庫に入れておいた弟や妹のおやつをこっそり食べているの。
もう毎日、毎日叱りきれないんですけど…」
T:「待って待って、叱らないで!
その短所、お子さんの才能ですよ。」
?:「あらイツキちゃん。
うちの子の欲張りは才能じゃないわよ。
単純にがめついだけなの。
少しでも自分が得をしたいのよ。」
T:「いえいえ、そんなことはありません。
大切に育てると篤志家や商売の才能になります。」
?:「イツキちゃん。私の話を聞いていた?
うちの子は他の人のためにお金を出すような子じゃないわ。
出来るだけ他の人のものも自分のものにしたい子なの。
あんなに自分さえ良ければいいなんて根性だと、
社会に出てから心配よ。」
T:「今じゃないんですよ。
長い人生の中で、
広い範囲に影響を及ぼす金銭感覚を養うのに、
必要な実験をしているだけです。」
?:「実験?」
T:「そうです。
欲しい物を手にいれるってどういうことか。
どうすればたくさん手に入るのか?
お金を使うとか貯めるってどういうことか?
やってみないと分からないでしょう?」
?:「それはそうだけど、
うちの子の欲張りはちょっと行き過ぎた感じがするのよ。」
T:「それは、その方面の才能が尖っているということですね。
引っ掛かりがあるような短所こそが、
突出した才能になっていくのです。
叱って自信さえ失わなければ。」
?:「えー。
しょっちゅう怒っちゃっているけどなぁ…。」
【才能の芽だと気付いたきっかけ】
T:「この短所が才能の芽だと思った、
きっかけを聞いていただけますか?」
?:「そうね、参考になるなら。」
T:「アトリエでも、何かの賞品を勝ち取る時に、
後出しじゃんけんをしてでも、
どうしても自分のものにしたい子はいます。
アトリエでは、3ヶ月に一度、
頑張って通って偉いねのご褒美を差し上げているのですが、
もっと良いものはないのか?と聞いてくる子もいます。
なんとかして二つもらう交渉をする子とか。」
?:「そうそう、うちの子もそんな感じなの。
イツキちゃんだって嫌でしょう?そういう子。」
T:「いえいえ、気持ちが分かるので。
私もそういう子でしたから。
なんとか粗品を二つもらいたがったり。
たくさん食べたがったり。
今でこそ遠慮も覚えましたが…。
子どもの頃はみっともないと母親に叱られて傷つきました。」
?:「それで、どうしてそれが才能だと思ったの?」
T:「大きくなる過程をずっと見せて頂いているからでしょうね。
最初はおやつを争って食べていた子たちも、
ルールやマナーを根気よく教えれば、
小さい子たちに譲ってくれるようになります。
抜け目のない子ほど、大人になって私のために、
プレゼントを用意してくれたりするようになるのです。
つまり、してもらって嬉しいことをちゃんと学習して、
対人関係に生かすことができるのです。」
?:「なるほど。
お金や物に興味がなかったら、
人や世の中が何を欲しがっているなんて分からないものね。
執着や欲のコントロールの仕方を覚えれば、
お金に興味がない子より、使い方が上手になるのね。」
T:「お母様すごい!
私の言いたいことをまとめて下さいました。
とにかく子ども達は悪気のかけらもないのです。
本人の資質から出る無意識の行動ですから。」
?:「短所じゃなくて、才能の芽だと思えば良いのか。
反射的に怒るのからやめてみよう…」
T:「お子さんの意地汚さやお金への執着は、一見すると短所に見えます。
けれど、実はお金を上手に扱える才能になることをご理解頂きたいのです。」
【才能の特徴と対処法】
◆この才能の特徴(短所として現れる)
・意地汚い
・がめつい
・自分のお金は使おうとしない(ケチ)
・人のお金をアテにする
・セコい
・損得で動く
・貰えるものはなんでももらう
・物欲がある
・高価なものを欲しがる
・衝動買いをする
◆短所に見える状況の対処法
?:「でもねぇ、実際問題として
みんなが見ている前で、
明らかにたくさんおやつを独り占めしたりするのは良くないでしょう?
自分の貯金を減らしたくないから、
おもちゃを買ってとしつこくせがむのも。
それも叱っちゃダメなの?」
T:「それはもちろんその通りです。
でも、叱らなくても良いんです。
優しく同じ調子で伝えるだけで。」
?:「その度に同じこと言わせられたら腹がたつじゃない?
怒っても当然でしょう?」
T:「それがですね、怒ってしまうとどうなると思います?」
なんとか得をしようとしたり、
お金に興味があることが才能なんです。
それを理性でコントロールする機会を得られずに、
叱って抑え込むことをすると、
大人になって実験を始めるので借金を背負ってしまったりするのです。」
?:「それ、メチャメチャ怖いですよね。」
T:「はい、うまい投資話に乗るとか。
実験を繰り返していないと、
上手い話なんてないという感覚が分からないのです。
子どもがお金に興味を持っている今が、センスを養うタイミングです。
というのも、お子さんの関心は色んな分野に移っていきますので。」
?:「子どものくせにお金に興味なんかと、心に蓋をしないということですね。」
T:「どれだけ楽しんで、
お金の価値を分かる経験をするかというところがポイントです。
それは必ずしも節約だけではありません。
儲ける方法も喜びも、
自分で感覚として掴んでいく必要があるのです。
親と同じ職業につき、同じ人生を歩む訳ではないですから。
親御さんの気持ちに合わなくても決して怒ったりしないでください。」
?:「わかりました。
子どもが自分の思う職業に就きたいと思った時に、
必要な能力が育ってなかったら困るものね。
でも、自信がないなぁ…。
具体的にはどうしてあげたらいいのかしら?」
◆エネルギーの発散方法
T:「このエネルギーの発散方法としては、
やはりお金を使ってみることです。
本物のお金でやり取りをするお店やさんごっこをしてみるとか。
本物が無理なら人生ゲームをしてみるのも面白いです。
株式のゲームとか、
そろばんや暗算の計算も興味を持つかもしれません。」
?:「お金ってこういう仕組みになっていて、
こんな風に貯めたり使ったりできるんだよと、
感覚的に分かれば良いってことですね。
数字に強くなる機会にもなるのか。」
T:「尖った才能はコントロールの仕方を知ってこそ活かされます。
コントロールの仕方がわかるようになるためには、
子どものうちに、小さなたくさんの失敗をした方が良いですよね。
使ってみたいというエネルギーの発散になるのです。」
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?:「自分の楽しみのために高価なものを買って、
使い過ぎているのを見ていると、
つい責め口調になってしまいます。
うちは親が公務員だったので、真面目で厳しかったから。」
T:「気持ちに合わないことを叱って、
罪悪感を持たせないように注意してください。
お子さんは失敗したと思ってしまいます。
また失敗するかもと思うと、
自分の使いたいお金の使い方ができなくなって、
ストレス解消に無駄なお金の使い方を始めてしまいますから。
お金って自分を幸せにするために使うんだ。
人も幸せにできると思えることが大切なんです。」
◆アトリエの授業では
?:「アトリエではさすがにお金のことまでは教えないですよね。」
T:「いえいえ、すごく大切にしている価値観です。」
?:「例えばどんなことをするの?」
T:「アトリエでは新入生が入ると、画材説明会をしています。
画材屋さんに来てもらって、
アトリエで使う画材の金額や用途を説明します。
お子さんたちに会計まで見てもらっていて、
お子さんと私で、親御さんにお礼を言うようにしています。
高価な画材を買って頂いたので、
一緒にお礼を言いましょうって。」
?:「それは良い教育だわね。」
T:「親御さんから直接、
こんな高いものを買ってあげたんだから、
有り難く思ってね。
一生懸命勉強しないと無駄になるのよ。と、言われたら、
お子さんは嫌な思いしかないですよね。
自分が買ってと頼んだものではないし。
だから、第3者が教える方が良いのです。」
?:「他にもあるの?」
T:「アトリエに通っている時間の意味を考えてもらいます。
人の制作の邪魔をして遊んでいるだけなら帰りなさいって言いますね。
ご両親が高いお金を払って、送り迎えの時間をかけてくれる意味、
あなた自身が家でテレビを見ながらゴロゴロする時間、
お友達と遊ぶ時間を無くしてもここに来ている意味を考えようか?と、話します。」
?:「それは随分厳しい言い方だわね。」
T:「子どもたちは、嫌なことがあったり疲れていたりすると集中力があがりません。
それも分かった上で、
アトリエにかけている時間やお金の意味を考えてもらうのです。
それは、大きくなった時に、
自分にかけてもらっているお金や学費の意味を考える機会になります。
親御さんは望んでお子さんを育てているので、
感謝なんかしてもらわなくて良いと言う考え方もあります。
けれど社会に出た時に、
感謝をするとかされるルールを知っていることが、
その子の武器になるのです。」
?:「なるほど、家庭だけじゃなくて、
社会でいろんな人や場所に触れるのって大事ですね。」
T:「いろんな職種や年齢の人に触れることが、
その子の社会的センスを養います。
アトリエでも実際のお金を使って、
クリスマス会で工夫を凝らしたお店を開いてもらいます。
材料を予算以内で買うことを練習してみるとか、
利益が出るか計算してみるとか、
看板やチラシを作って演出を考え、
お客さんを呼んだりお釣りの計算もしてみます。
どうすれば儲けられるか考えてみよう。
その上で、任意で構わないので、
儲けた中から、
一部を社会福祉協議会の寄付に下さいってお願いします。
自分が稼いだお金で社会参加ができる感覚って大切ですから。
いろんな方法でお金に関するセンスを育てられると思います。
ご家族で楽しんで考えてみて下さい。」
?:「早速、家でも練習をして、地域のフリーマーケットに参加してみます。」
T:「ダメだと思うことを責めずに、才能に変えて伸ばしてあげるのです。
例えば投資家、起業家、篤志家など、
お金に関係する事を一緒に勉強して経験してみれば良いのです。」
◆将来に活かせる道
?:「それは、面白そう。
私が勉強したいくらいだわ。」
T:「それはとても良いですね。
ご一緒にネットオークションや、ネットショップを経験したり、
ネットで株をしている様子をお母さんが見せてあげても良いですね。
失敗しても成功しても勉強になると思うのです。
感覚やセンスを養うって大切で、
失敗はとても参考になると思います。
自分が大人になって、
大きく転ばない転び方を覚えるという意味でも重要ではないでしょうか?」
?:「えー、できれば転ぶところは子どもに見せたくないです^^;
大きくなったらいろんな職業に活かせそうですね。」
T:「はい、なんの職業に就くにしてもお金のセンスを鍛えるのって大切です。
特に大きなお金が動く仕事は、なおさらですよね。
投資家、起業家、質屋、金券ショップ、不動産、トレーダー、経営コンサルタント、
保険セールス、金融商品の営業マン、オークションの会社、ファイナンシャルプランナー、
アナリスト、ファンドマネージャーなどなど。」
?:「確かに、勉強だけさせていても、
対人関係や金銭感覚は育たないですものね。
仕事上で大きなお金を初めて自由に扱ったら大変ですね。」
T:「感覚としてないものを、
できると思うことも、大丈夫だと思い込むことも怖いことです。
それは保証もないのに、
事業が成功して借金は返せるに違いないと思い込むことと同じです。
子どものうちの経験値は貴重ですよ。
できればゲームなどの2次元じゃなくて、
実際の生活でもたくさん経験させてあげてください。」
?:「何になるのでも、お金とは切り離せないですものね。
設備投資とか。人件費とか。
うちの子のお金へのこだわりは大切な興味なんですね。」
T:「商才があるとも言えますよね。
芸術家でも商才のある人や、
医者でも商才のある人という風に、
他の才能と組み合わせても使えます。」
?:「クリエイターが創造力に長けていても、
お金に替えられるとは限らないですものね。
ぜひ育ててあげたい能力です。」
【お母さま達へのエール】
T:「理性でコントロール出来れば、
親子で得する事がたくさんある才能だと思うのでチャレンジしてみて下さい。
実際のお金を使う時には、
リスクを冷静に伝えられるようにしたいですね。」
?:「なるほど!よく分かりました。
今まで叱ってごめんね。と、子どもに謝ります。
イツキちゃんありがとう!」
T:「こちらこそ!
話を聞いて下さってありがとうございます。
この才能を持つお子さんのお母さまは、
お金に関する執着を理性でコントロールさせるのに大変です。
けれど、お金の才能を育てると人生にとても役に立ちます。
だから、是非この才能を育てる子育てをしてみて下さい。
お子さんが心身ともにそばにいてくれるのは、
高学年になるまでの10年くらいであっという間です。
限られた時間を楽しく、ご一緒に過ごして下さいね^^。」
第11回「意地汚くてお金に執着があるのは、篤志家や商売の才能の芽」
〜叱らないで!その短所、お子さんの才能です〜を、
最後までお読み頂きありがとうございます!
なんでも独り占めにするとか、お金にすごくこだわる子を、
子どもらしくないと今まで一生懸命に叱ってきたお母様。
意地汚いしケチで困ると思っても、
叱らない方が良い訳をお分かり頂けたでしょうか?
このコラムでは叱らなければいけないと思っている短所の多くが、
どんな才能に成長するかをお話させていただきます。
次回はいつもゴロゴロし、反応が鈍いお子さんの才能です。
ついついイラついたりムカついたりして怒ってしまうような、
お子さんの問題行動や直らない癖。
そんな短所に困っているお母様は、
「これってどんな才能なの?」と、質問してくださると嬉しいです。
出来るだけ状況を詳しくお書きくださいね。
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