「普通の生活に戻れるかもしれない」そう思った矢先、思わぬ事件が起こり…【性被害に遭って10年ひきこもった私が娘と出会うまで⑩】 by たんこ
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「たんこちゃんのこと、好きになってしまった」
穏やかで、どこかハイになっていた私の心に、
突然波風が立ち始めます。
波風どころか、大嵐でした。
友人として少し離れた位置にいる間は大丈夫だったのに、
私に好意を寄せているとわかった途端に、私は、信頼していたAを、
あの悪魔と同じ生き物だと認識するようになってしまったのです。
複雑な生い立ちを抱え、女性関係で問題を起こすこともあったA。
そんなAが、私を女として見ている。
自分だって主治医に恋をしていたのに、していることは同じなのに、
私はAを許せませんでした。
私はここで、自分の心に生じている歪みが根深いものだと知ることになります。
“気持ち悪い。怖い。許せない。”
性加害の加害者にだけ向けられるべきそんな感情を、
今まで支えてくれたAにまで向けてしまっている。
向けるべきでないのはわかっているのに、Aには何の罪もないのに、
向けてしまっている。
私はここで再び、自己嫌悪の沼にハマってしまうのでした。
そこから少しA・Bと距離を置くようになってしまった私に、
Aが事故で重傷を負ったと連絡がきます。
Aはバイクの事故で、片脚を失っていました。
病院でボロボロになったAとの再会は、あの日の、私の入院先での出来事を
思い起こさせるようでした。
「そうだ、私はあの時助けてもらったんだ…」
「私もAを助けないと…」
私はそこから、Bと共にAをお見舞いするようになりました。
Aに想いを告げられたことは言いませんでした。
私の検査入院とは違い、Aの入院は長期に及びました。
その中で、最初は空元気だったAの様子が、少しずつ、少しずつ変わっていきます。
初めは仲良さそうに会話していた看護師さんに暴言を吐くようになり、
リハビリにやってくる理学療法士さんに触られるのを嫌がるようになりました。
お見舞いにやってきたBの差し入れを、目の前で投げて捨てることもありました。
これは脚を失ったことへの障害受容の段階が切り替わったことでの
当たり前の反応だと、理学療法士さんは優しく説明してくださいました。
私はそこで、Aの身に起きた出来事の重大さに、やっと気付いた気がします。
今、Aは真っ暗闇の、嵐の中にいるんだ…。
それでも決して、私は彼の想いに答える自信はありませんでした。
でも、お見舞いは続けました。リハビリを渋るAの背中を叩いて叱咤したり、
食事を拒否するAの代わりに病院食を平らげて、こっそりお菓子を食べさせたり…
私はここでリハビリを行う理学療法士というお仕事を知り、
通信制高校卒業後にその専門学校へと進学する決心をします。
…言ってしまうと、私のようなコミュ障が目指していいお仕事ではないのですが、
もしこの先Aがリハビリを拒否し続けても私がしてあげられるように勉強をしたい、
というのが、志望動機でした。
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作者:たんこさん
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本記事は個人的体験談などに基づいて作成されており、脚色なども加えられている場合もあり、必ずしも各読者の状況にあてはまるとは限りません。この記事の情報を用いて行動される場合、ご自身の責任と判断により対応いただけますようお願い致します。尚、記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。