『旅行に行ったからじゃない?』娘の発熱で早退する私に職場の人は…【育児休暇後、会社勤めを続けられない。⑥】 by さやけん
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上司はいつもと変わらず「しょうがないよ!お大事にね!」と言ってくれました。
ありがたいと思う気持ちは確かにあったものの
頭をよぎるのはあの給与明細…
また手取り数千円の給料になってしまう…
傷病手当などの制度は自分自身の急病には利用できても、家族の急病では適用されません。
娘に頑張らせること、自分が頑張ることで得られるメリットが皆無の状態で、前向きに頑張ることが難しくなっていきました。
けれども会社には相変わらず迷惑をかけ続けている。
なんとしてでも休んだ分を取り返したい。迷惑をかけた人にお礼がしたい…!
どうあっても休まず出勤することが難しかったので、
二週間以上の長期療養から復帰するときは必ずお茶菓子などを持参して出勤しました。
申し訳ない気持ちとお礼の気持ちを込めて、
そして多分、自分の罪悪感を少しでも減らしたかったのだと思います。
総支給額がとんでもなく少ないということを知っていた上司は
「こんなことしなくていいのに。自分のために、家族のために使ったらいいのに」と言ってくれましたが
それでは私の気持ちがおさまりませんでした。
給与の手取りが数万円を超えることがないまま日々が過ぎていき、娘が2歳になった頃。
ほんの少しだけ変化がみられました。
娘は娘なりに少しずつ体も強くなっていきました。
まるまるひと月出勤できることは稀だったものの、それでも連続して出勤できる日が少しずつ増えていきました。
思えば下の子が生まれてからというもの、入退院や家族の体調不良が相次ぎ
上の子を遊びに連れて行くこともままならず、保育園が休みの日は家の中で遊ばせる日が続いていました。
妹の入退院で母が近くにいない日々は、息子にとってはきっととても寂しいものだったでしょう。
家に帰ってきても、妹の世話ばかりしている母に対してわがままを飲み込んだ日もあったかもしれません。
だからこそ、息子に思う存分はしゃいでもらいたい。
そう思い、土日の休みを利用し、近場ではありましたが小旅行にでかけました。
そしてそんな時でもやっぱり…
会社へ日頃の感謝の気持ちを込めて、少し高めのお土産を買って行くことにしました。
とっても美味しいお菓子、きっと喜んでくれる!
土曜日と日曜日に思う存分遊び、月曜日にそのお土産をもって出勤したのですが…
月曜日のお昼休憩の後、お昼の検温で熱が出ていることが判明したと保育園から連絡が入りました。
上司に報告したところ…
「旅行の疲れが出たのかな?」
私もそう感じていましたし、上司も同じように考えたのだと思いました。
けれど、その言葉はずっしりとのし掛かりました。
そして…
普段業務上では関わりが少ない他部署の方にもお土産を配ったため、お礼を言いにきてくれたのですが
「娘の急病で早退する」ということがわかった途端、
「それはきっと旅行疲れだね」「旅行なんて行ったからじゃない?」
と言われてしまいました。
当然のことだと思ったから、何の言い訳もできませんでした。
私自身も、「きっと旅行に連れて行ったからだ」と感じました。
けれどどうしたらよかったのでしょうか。
熱もなく、元気だったんです。
息子を思う存分遊ばせてあげたかったんです。
娘も、保育園と家の往復ばかりでなく、色々な景色を見せてあげたかったんです。
遊びに行ったと言わなければいい?
お土産なんて買ってこなければきっと「旅行にいったせいだ」と言われることはなかったでしょう。
プライベートなことは話さず、わざわざお土産も買わなければよかったのかもしれません。
それとも、娘はそもそも病弱なのだから
例え元気に見えたって、例え最近熱を出していないからって
泊まりの旅行なんて連れて行ってはいけないのかもしれません。
どうすればいいのか。どうすればいいのか。
ぐるぐると色々な解決策を巡らせました。
けれど正解なんて、本当はすでにわかっていました。
どうせ収入なんて家計の足しにもならずマイナス。
会社の人に頭を下げて何度も謝って、それでも迷惑ばかりかけてしまうし
娘を病気にばかりさせてしまう。
どう考えたって私は仕事を続けないほうがいい。
どうしてそこまでして働くのか。何のために働くのか。
私が辞めさえすれば、娘がウイルスに晒されて何度も熱を出すこともなくなるし
仮に熱を出しても誰に謝る必要もなく思う存分看病してあげられる。
息子をもっと自由に元気に遊ばせてあげられる。
甘えたい盛りの息子を、もっともっと甘えさせてあげられる。
それは第一子の妊娠が発覚した頃、上司から言われた言葉でした。
「3歳まではしょうがない」
上司は私が休むたびに、そう言って勇気づけてくれました。
誰だってそうやって大きくなっていくんだ。と教えてくれました。
私にとってその言葉は、会社勤めを続けるために必要なたった一つの希望でもありました。
2歳になった娘は、1歳の頃に比べると随分強くなった。
きっと3歳になればもっと…!
そう思っていたのですが…
娘は3歳を過ぎても、変わらず「ひと月休まず登園する」ということができずにいました。
相変わらず、入院が必要なこともありました。
3歳になったらきっと大丈夫。という希望は打ち砕かれてしまいました。
何度休んでもずっと勇気づけてくれていた上司…。
どんなときでも「しょうがない」「そんなことよりもさやけんさんの体調が心配だ」と優しい声をかけてくれた彼女が
今回の入院と長期療養期間中に急病で長期休暇することになったことを
私は復帰した際にはじめて聞かされることになるのです…
つづきます。
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